シルバーシートは必要か?

シルバーシートは必要か?

お得意先に久しぶりに行った帰りの
電車の話です。

最近はシルバーシートは3人掛けが多いが
その電車は珍しく4人掛けだった。
私はシルバーシートにあまり座りたくないので
同じ車両の反対側の3人掛けのシートに座ることが多い。
理由は角に座れる可能性が高いからだ。

その日は階段を上がると電車のドアがもう開いていた。
私は小走りで近くのドアから乗った。
運が悪い?事にシルバーシートの前だった。
目の前の4人掛けのシートに3人座っていた。
後ろのシートは4人座ったいた。

私はこのような場合大抵座らない。
なぜならば窮屈で肩がこるような気がして
座った方が余計疲れるからだ。

0.5人分のシートに50代ぐらいのオバサンが座った。
体格は1.2人分ぐらいはどう見てもありそうだ。

オバサンの両隣は若干迷惑そうな顔をしているのを見て私は
座らなくて良かったと思った。
そうこうしていると電車は次の駅に停車した。

団塊の世代と思われるお爺さんが乗ってきた。
お爺さんはシルバーシートの前に進んだ。その前には20歳ぐらいの大学生風の男性が座っていた。
これも私がシルバーシートに座らない理由だ。
別に席を譲るのが嫌な訳ではなく、その時の会話があまり好きではないのだ。

お爺さんは大学生らしき男性の膝を叩き、少し大きな声で話しかけ出した。
「いい若い者がシルバーシートに座るのは良くないな。俺のような高度経済成長を
支えた人間の前では尚更だ。あんたもそう思うだろ」

お爺さんの最後の言葉はオバサンに向けてのもののようだった。
オバサンは頷いたような感じもしたが、顔はそんなに動いていなかった。

大学生らしき男性はとても背筋がまっすぐしていた。
そしてとてもゆったりとしたした口調で話し始めた。
小学校の先生が1年生に話すように。

「あなたは私のような大学生がシルバーシートに座っていて
あなたのような人が前にいるにも関わらず立たないのは理由があると思わないのですか」

「たとえば学校の部活動のサッカーで足をねん挫したとか」

「ねん挫ぐらいどうしたって言うんだ」

「私はあなたが私の前に立った時、次の駅で降りようと思いました。
そして、次の駅で後続の電車に乗ろうと考えました。何も言わずに」

「2、3年後アンタの上司になる奴は苦労するだろうな
君もそう思うだろ。平成生まれはこれだから困るんだよ」

私はオバサンと違って何も反応できなかった。

電車は減速し始めた。次の駅は急行の通過待ちがある駅だ。
電車が止まると大学生は立ち上がった。
そして右足のズボンの裾を少し持ち上げた。

彼の右足は義足だった。

「スマン」と小さな声でバツが悪そうにお爺さんは声を絞り出した。

「あなた方の世代が不必要な色の違うシートを作ったんでしょう」

そういって彼は電車を降りて行った。

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